ご存じでしたか?クスリの気になる話。 自分の健康を守るため薬について正しく知りましょう。今さら聞けない素朴な疑問や、勘違いしがちな薬のはてなに専門家がお答えします。
- Q01 温湿布と冷湿布はどう使い分ければよいですか?
- Q02 服薬後にはグレープフルーツを食べたらダメって本当ですか?
- Q03 消毒剤を使わない方が傷が早く治るって本当ですか?
- Q04 健康食品やサプリメントと薬、一緒に飲んでも大丈夫ですか?
- Q05 水以外のもので薬を飲むとどうしていけないのですか?
- Q06 目薬は開封してからどれくらい使えますか?
- Q07 鼻づまりやくしゃみ止めの薬を飲んだ後、運転はダメですか?
- Q08 副作用が怖いので薬が嫌です。漢方薬なら安全でしょうか?
- Q09 ジェネリック医薬品は安くても品質や効き目は同じですか?
- Q10 食前や食後など、服薬時間の指示は守らないとダメですか?
Q01. 温湿布と冷湿布はどう使い分ければよいですか?
温湿布は患部をポカポカと温め、冷湿布は逆に患部をひんやり冷たく感じさせる治療法です。 冷湿布には貼ったときに冷たく感じるハッカの成分が入っており、温湿布には唐辛子の成分であるカプサイシンなどが入っているために温かく感じます。
患部に働きかけて痛みを抑えるのは、湿布に含まれる消炎鎮痛剤の成分によるものです。 温湿布と冷湿布の使い分けに関しては、「患部に当てたときに気持ちよく感じる方を使えばいい」という程度で、整形外科的に厳密な使い分けがあるわけではないようです。
Q02. 服薬後にはグレープフルーツを食べたらダメって本当ですか?
グレープフルーツジュースを飲んだり、グレープフルーツを大量に食べると薬物の血中濃度が上昇し、薬の作用が強くなって、ときには副作用が強く現れることがあります。
食べ物の間に「食べ合わせのよくないもの」があるように、食べ物と薬の間に「飲み合わせのよくないもの」があるのです。 このように薬との飲み合わせが反応を起こすことを「薬物-食物相互作用」と呼びます。
これまでに、高血圧や狭心症の治療に使われるカルシウム拮抗剤や、コレステロールを下げるHMG―CoA還元酵素阻害薬、免疫抑制薬などのうち一部の薬でグレープフルーツとの併用による相互作用が報告されています。
グレープフルーツと薬の相互作用の仕組みとしては、主に肝臓に含まれ、薬を分解する酵素(CYP450)の作用を強く阻害することで薬物の代謝が悪くなる「代謝阻害」や、薬物を排出する役割を担うP糖タンパク質の動きを阻害する「排出阻害」などが考えられています。
同じグループの薬剤でも、グレープフルーツの摂取を控えた方が良いケースや相互作用が認められないケース、ごくわずかに相互作用が認められているが実際には併用しても差し支えないケースもあります。
また、最近ではグレープフルーツと併用することで、逆に血中濃度が低下する薬物もあったという報告もあります。
いずれにしても、相互作用による危険性が臨床試験によって明確にされていなくても、相互作用が起こらないことが証明されない限り、「薬を飲んだときのグレープフルーツの摂取は控えておいたほうが安全である」と言えるでしょう。
Q03. 消毒剤を使わない方が傷が早く治るって本当ですか?
消毒剤の中には、再生しようとしている傷部分の細胞に反対にダメージを与えたり、また、何回も使用することで薬剤成分が患部に残り、結果として治りにくくなる場合もあります。
そこで、消毒剤を使わず新素材テープ剤で傷口をぴったり覆って治すのが「モイストヒーリング」という新しい傷ケアの考え方です。 傷ができた時に出る体液には皮膚再生に大切な役割を果たす成分が含まれており、体液を保持し、潤った環境を保つことで傷の修復を促します。
ただし、汚れなどが傷に付着している場合、水道水や薄い消毒剤で十分に洗浄することは化膿を防ぐ意味からも必要です。
また、異物が刺さったり残っている傷、動物にかまれた傷などは必ず医師の診察を受けてください。
Q04. 健康食品やサプリメントと薬、一緒に飲んでも大丈夫ですか?
「普通の食品よりも健康によいとして販売されている食品」を健康食品と称していますが、一部を除き法律上の定義はありません。 このように、健康食品やサプリメントは薬ではありませんが、使い方を間違えると体に害を及ぼしたり、薬との飲み合わせがよくないものもあります。
例えば、カルシウムやマグネシウムを一緒に取ることで、効き目が弱くなる抗生物質があったり、ワルファリンを飲んでいる人が納豆やクロレラ、セントジョーンズワートを一緒に取れば、ワルファリンの作用を弱め、血栓症を起こしやすくなります。
最近は「自分の健康は自分で守る」というセルフメディケーションの考え方が広まってきました。 医薬品同様の効果を期待される特定保健用食品が次々と販売されています。 とはいえ、血圧を下げる効果のあるものを血圧の薬といっしょに取れば、血圧が下がりすぎたり、副作用から咳が出ることもあります。
栄養素を取るには、規則的でバランスの良い食事が基本。 健康食品やサプリメントの利用は補助的なものと考えましょう。
なお、健康食品やサプリメントの包装や容器には重要な注意事項が書いてありますので必ず読んでください。 かかりつけの医師や薬剤師にも、飲んでいる健康食品などを伝えておいた方がよいでしょう。
Q05. 水以外のもので薬を飲むとどうしていけないのですか?
昔から「薬は白湯で飲むこと」といわれています。 白湯とは何も混ぜない冷ましたお湯のことです。 医薬品は中性の水で服用することを前提として製造されています。
薬は服用後、胃の中でできるだけ早く溶ける必要がありますので、コップ一杯程度の水で飲みましょう。 水なしで服用すると溶けにくいだけではなく、食道や胃壁に付着して潰瘍を生じることがありますので要注意です。
また、スポーツドリンクやミネラルウオーターは高濃度のカルシウムやマグネシウムを含んでいる「硬水」ですので、薬成分などとの相互作用が考えられます。
カルシウムを多く含む牛乳や酸性飲料(コーラ、コーヒー)と一緒に服薬することも避けた方が良いでしょう。 もちろんアルコール類は禁止です。
Q06. 目薬は開封してからどれくらい使えますか?
厳密にいえば、成分ごとに安定性は異なりますし、保管状況も大きく影響します。 目薬は無菌的に作られる医薬品ですから、どんなに気をつけて清潔に使用したとしても、開封後約1ヶ月が目安です。
一部の例外を除き、冷蔵庫保存が原則です。 点眼時に容器の先が患部に触れてしまったり、薬液が濁っていたり、フタのまわりに白い粉(成分や添加物)が付いているときは使用を控えましょう。
なお、目薬は多量にさす必要はありません。 一滴を確実にさしてください。 点眼後は目を閉じ、薬が全体に行き渡るようにするのも有効です。
Q07. 鼻づまりやくしゃみ止めの薬を飲んだ後、運転はダメですか?
鼻づまりやくしゃみ、かゆみなどのアレルギー反応は、花粉やダニなどの原因物質によって、ヒスタミンやセロトニンなどが血中に放出されることで生じます。
抗ヒスタミン薬は、このアレルギー反応の受け皿であるヒスタミン受容体をブロックする(ヒスタミン受容体拮抗作用)ことで症状を抑えます。
現在、ヒスタミン受容体にはH1、H2、p、h3の4種類が確認されています。 H1拮抗薬は抗ヒスタミン薬として、H2拮抗薬は胃酸分泌抑制薬として汎用されています。
第1世代の抗ヒスタミン薬(H1)は、血液脳関門(脳の血管から神経細胞へと有害な物質が移行しないように働く障壁)を通過しやすく、ほとんどが鎮静・催眠作用を持っています。 そのため服用した人の25%~50%に眠気が見られます。
しかし、その後に開発された第2世代では、第1世代と比較して薬の中枢神経への移行が少ないことから、催眠作用も弱くなっており、また、ヒスタミン受容体拮抗作用を持たない最近の抗アレルギー薬では眠気を催すことがより少ないといわれています。
【抗ヒスタミン薬服用中の注意】
- 服用期間は車の運転、危険を伴う機械の操作などには従事しないこと。
- 1日1回の投与であれば、就寝前服用とし日中の眠気を回避すること。
Q08. 副作用が怖いので薬が嫌です。 漢方薬なら安全でしょうか?
薬の「副作用」とは、本来の目的である「主作用」ではない作用全般を指します。 成分の影響や患者さんの体質、薬の使い方の間違いなど、いろいろな原因で起こるものです。
漢方薬は主に草の根や木の皮などを混合して作った薬で、同じ薬でも体質や症状に合わせて、いろいろな病気に使うことがあります。
「化学的に作られたものではないので安全で副作用がない」と思われているようですが、「胃腸障害」や「むくみ」などの副作用が出るケースもあります。 いつもと違う症状が出たときには医師や薬剤師に相談してください。
病気にはそれぞれの患者さんの体質が関わっています。 漢方薬も患者さん一人ひとりの体質に合わせて処方する医薬品なのです。
Q09. ジェネリック医薬品は安くても品質や効き目は同じですか?
通常、医薬品は薬の成分などの実際の有効性や安全性を膨大な臨床試験で証明し、承認されて始めて医薬品として使用されます。 このような医薬品を「先発医薬品」と呼んでいます。
この「先発医薬品」の特許が切れた後に、成分含量や剤形などが同一であるということで、臨床試験を行わずに認証されるのが「ジェネリック医薬品(後発医薬品)」です。 ジェネリック医薬品は臨床試験を省くことができるので、先発品に比べ値段が安いという特徴があります。
ジェネリック医薬品を考えるときのキーワードは「医療費削減」と「根拠に基づいた医療(EMB)」です。 それぞれの考え方や切り口によって慎重派、推進派を含めさまざまな見解があります。
どちらの言い分も患者さんのこと考えて慎重な発言に違いありません。 ただ、わが国では薬に関するデータや情報の開示、また薬を使用した後のアフターケアなどの環境整備が必ずしも十分ではありませんでした。
同じ素材と調味料を使って同じレシピで調理したとしても、必ずしも同じ味になるわけではなく、下ごしらえ・手順・隠し味などによって随分異なった味になることもあるように、薬も成分や規格が同じだからといって、同じ効用があるとは言い切れません。
ましてや薬は最先端の情報と技術が詰まったものです。 臨床試験を省略しているジェネリック医薬品の場合、実際の効果について確実なデータが少ないというのが現状です。
一方で、高齢化に伴い国民総医療費は確実に増加し、個人負担率の引き上げもやむをえない状況にあります。 薬によって先発品と後発品の値段の差は異なりますが、比較的安価なジェネリック医薬品の使用促進策が進められており、ジェネリック医薬品に関する情報提供は極めて大切です。
ジェネリック医薬品を利用する場合は、医者や薬剤師などの専門家と相談し、十分納得した上で決定するのがよいでしょう。
Q10. 食前や食後など、服薬時間の指示は守らないとダメですか?
従来の薬は作用時間が比較的短く、1日3~4回服用するものが多かったのですが、現在では、製剤技術の進歩や、ライフスタイルの変化などもあり、1日1~2回の服用でいい薬剤が多くなっています。
だいたいの目安として「食前」とは食事の前の空腹時、「食後」とは食事の後30分~1時間以内に服用するのが望ましいと考えます。 また「食間」は食事と次の食事の間ということですので、食事をとってから2~3時間空けて服用すればよいでしょう。
薬を食後に服用する理由としては「薬を忘れずに服用してもらうこと」と「胃粘膜保護」の2つが挙げられます。 薬を処方された指示通りに服用してもらうことを「服用コンプライアンス」といいます。
この服用コンプライアンスの観点からは、食事の後に薬を飲むという習慣によって、薬の飲み忘れを防ぐことが期待されています。 医師からの特別な指示がなければ、たいていは1日1回で朝食後、1日2回で朝食後と夕食後に服用するのが一般的です。
食後に服用するもう一つの理由としては、胃粘膜の保護が挙げられます。 特に、痛み止めなど薬の成分によっては胃に対する刺激が強く、空腹時に服用すると胃腸障害を起こす恐れのあるものがあります。
このような理由からも食後に服用することが望ましく、たとえビスケットなど、少量でも何か食べてから服用するようにしましょう。
漢方薬は食前、ないし食間の指示が多いようですが、実際には他の薬と同じく食後に飲んでもかまいません。 食事の前に飲むのを忘れたからといって、次の食前まで空けるのではなく、気が付いた食後に飲んでも良いのです。 肝心なことは忘れずに飲むということです。
ただし、薬によっては効果を最大に発揮させる目的で「食前」「空腹時」「食直後」や「食間」という指示のある場合もありますので、できる限り指示を守るようにしてください。
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