最近、お年寄りのかかりやすい病気やよくみられる症状、療法・予防法をわかりやすくご説明します。日本では、現在高齢化社会を迎えていますので、介護する側・介護される側の知識を深めて、日頃から健康を心がけましょう!
- sick01 骨粗鬆症 (こつそしょうしょう)
- sick02 腰痛 (ようつう)
- sick03 老人性痴呆 (ろうじんせいちほう)
- sick04 白内障 (はくないしょう)
- sick05 緑内障 (りょくないしょう)
- sick06 床ずれ (とこずれ)
- sick07 尿失禁 (にょうしっきん)
骨粗鬆症 (こつそしょうしょう)
骨粗鬆症は骨を構成しているリン酸カルシウムの量が減少することにより、骨が軽石のように小さな穴がたくさんあいてしまった状態になり、もろくなる病気です。 女性が男性の3倍強と多く、50~60歳を境に急増します。 骨粗鬆症の検査は、レントゲンや超音波など利用して痛みも無く簡単にできます。
01. 症状
- 身体を動かしたとき、腰や背中に鋭い痛みを感じる。
- 腰や背中に慢性的なだるさや痛みを感じる。
- ちょっと手をついたり、転倒しただけで骨折する。
02. 療法
- カルシウム剤
骨の主成分であるカルシウムを補給します。 - エストロゲン
女性ホルモンで閉経による骨量の減少を抑制し、骨の形成を促進します。 - カルシトニン
甲状腺から出るホルモンで骨吸収を抑制し、腰痛を緩和します。 - 活性型ビタミンD
腸管からのカルシウム吸収を促進し骨形成を促進します。 - イプリフラボン
骨からカルシウムが抜けていくのを直接抑え、カルシトニンの分泌を促します。
03. 予防
骨の主成分はカルシウムですから丈夫な骨を作るには、カルシウムを数回にわけて多くとる事、またビタミンDがカルシウムの吸収を促進します。 日常生活では、日光浴や散歩など軽い運動を行うこともカルシウムの吸収を高めます。
04. カルシウムの豊富な食品
- 牛乳、ヨーグルト、チーズなどの乳製品
- ししゃも、しらす干し、干しえびなどの魚製品
- 小松菜、春菊、野沢菜などの緑黄色野菜
- 豆腐、油揚げ、おから、納豆などの豆類
- 昆布、ひじき、わかめ、ごまなどの乾物
05. ビタミンDの豊富な食品
- さんま、マグロなどの魚
- レバーなど肉
- きのこ、卵など
腰痛 (ようつう)
腰椎(腰のところにある背骨)は、筋肉とじん帯だけで支えられているので、いつも大きな負担をしいられています。 体に無理がきかなくなる40~50歳以降になると痛みを訴える人が増えてきます。
01. 症状
- 椎間板ヘルニア (ついかんばんへるにあ)
軟骨がとび出して神経を圧迫するもので、腰痛や足のしびれをおこす。 激しい運動をしたためにおこるもの(20~30歳代)と老化によってひどくなっていく(青年期~壮年期)にわかれます。 - 変形性脊椎症 (へんけいせいけいついしょう)
椎体のふちがどげのように変形し、神経を刺激しておきる痛みで、男性に多い朝起きがけや体を動かし始めた時に強く痛み、体を動かしているうちに楽になり、疲れてくると再び痛み出すという特徴があります。 - 骨粗鬆症 (こつそしょうしょう)
骨の量が少なくなりちょっとした事で骨折して腰痛がおきたりします。 閉経期以降の女性に多くみられます。 - 脊柱管狭窄症 (せきちゅうかんきょうさくしょう)
脊柱管がせばめられているもので、そのために神経を圧迫します。 腰から下半身が痛み、歩くと痛みが増し、腰掛けて休むと良くなるのが特徴です。
02. 療法
- 安静療法 (あんせいりょうほう)
楽な姿勢で安眠をとることがもっとも大切です。 - 薬物療法 (やくぶつりょうほう)
痛みをとるために鎮痛消炎剤、筋弛暖剤、ビタミン剤、精神安定剤などを服用します。 筋弛緩剤や精神安定剤は眠気があらわれることがありますので、危険な作業や高所は避けましょう。 鎮痛消炎剤は胃腸障害があらわれることがありますので、食後すぐ多めの水で服用しましょう。 - 温熱療法 (おんねつりょうほう)
温浴やホットパック、温湿布など温めることによって血行が良くなり症状が軽くなります。 - 局所注射 (きょくしょちゅうしゃ)
痛みの原因となっている神経に麻酔薬を注射し、痛みを取り除きます。 - コルセット
背骨の負担を軽くして、日常生活を楽にします。 - けん引療法
背骨をけん引することによって椎間板の圧迫を取り除き痛みをおさえます。
老人性痴呆 (ろうじんせいちほう)
痴呆とは「知的機能の低下が甚だしく、一人では社会生活を営むことができず、他人の介助を必要とするもの」といわれます。 老年期の痴呆は脳血管性痴呆とアルツハイマー型老年痴呆の2つに大別されます
01. 症状
- 脳血管性痴呆 (のうけっかんせいちほう)
脳動脈硬化による小規模の脳梗塞が脳の中心部や大脳白質にいくつか起こったもの。 知のセンターである大脳皮質は冒されておらず、いわば知のセンターにつながる通信回線の束の一部に障害がおこった状態なので、正常なところと異常なところがあります。 本人は正常でないという意識があり、聞かれてもわからないことに言い訳じみたことを口にしたりします。 - アルツハイマー型老年痴呆 (あるつはいまーがたろうねんちほう)
大脳皮質そのもの、すなわち知のセンターが直接障害を受けたもので、すべての知的機能が例外なく冒されます。 アルツハイマー型は極めてゆっくりと確実に進行します。 本人には痴呆の意識は全然なく、人格が変わってしまうこともあります。
02. 療法
痴呆は知的機能の障害はあっても、感情面ではかなりシャープなところがあり、よく人を見ています。 痴呆だからと卑下しないで温かく接することが大切です。
03. 予防
頭をよく使うことが大切なのは言うまでもありませんが、努力してモノを書いたり表現したりする能動的な頭の使い方が効果的です。 脳血管性痴呆の原因に動脈硬化がありますので、動脈硬化にならないことが大切です。
白内障 (はくないしょう)
目をカメラに例えると、カメラのレンズに相当するのが水晶体です。 水晶体は透明な凸レンズ状の組織で、目に入ってきた光線を屈折して物体の像を網膜上にうまく結ばせる作用があります。 この水晶体が濁ってくると光が散乱されて網膜に像を結ぶ働きが弱まり、かすんで見えるようになります。 白内障の原因には糖尿病や緑内障など他の眼疾患、放射線、薬の副作用、遺伝などがありますが、一番多いのは老化からくるものです。
01. 症状
- 目がかすむ、ちらちらする。
- 目の前に霧がかかったようにぼんやりしか見えなくなる。
- 白内障が進むと瞳孔が白く濁って見えるため「白そこひ」とも呼ばれます。
02. 療法
進行を遅らせる目的で点眼薬、内服液が使われます。 混濁が進行して視力が低下し、日常生活に支障を来たすようになると手術が必要となります。
緑内障 (りょくないしょう)
緑内障とは眼球内の圧力(眼力)が高くなり、視神経が圧迫されることにより起きます。 眼球の圧力を一定に保っているのは水晶体の前の前房と呼ばれる部分における「房水」という水の流れなのです。 この房水の流れが何らかの原因で悪くなると眼圧が高くなります。 緑内障はお年寄りだけでなく若い人にも多い病気です。
01. 症状
次第に視力が低下し、視野が欠けていきます。
02. 療法
眼圧を正常にし視機能障害の発生、進行を予防するために点眼薬、内服液が使われます。
03. 注意
緑内障の人が気をつけなければならない眼圧をあげる薬はかなりあります。
- かぜ薬(抗ヒスタミン剤を含むもの)
パブロンエス、ベンザエースカプレット、新ルルA錠、コルゲンETなど - 鼻炎薬
コンタックSR、スカイナー鼻炎用S、ストナリニ、持続性プレコール鼻炎薬など - 胃腸薬(副交感神経遮断剤を含むもの)
サクロンプラス、タケダ胃腸薬21、キャベジンコーワ錠、新三共胃腸薬錠、中外胃腸薬など - 乗物酔止め薬
トラベルミンシニア、センパアSなど
※この他にも注意しなければならないものは多いので、薬の服用に際しては医師や薬剤師に相談してください。
床ずれ (とこずれ)
長い間寝たきりのなど同じ姿勢でいると、体重や寝具の重みで血液の環境が悪くなり床ずれができやすく、悪化すると感染、敗血症などを引き起こし大事に至ることがあります。 床ずれは、皮膚や皮下組織の血液循環が悪くなり、潰瘍ができる状態のことをいいます。
01. 症状
できやすい部分(特に骨が出っ張っている部位)頭の後ろ、耳(枕のあたるところ)、肩、肩甲骨、腰(一番できやすい)、腰骨、ひじ、手首、ひざ、くるぶし、かかと、つま先など。
- 赤くなる(米粒くらいのものから)
- 水疱ができる
- びらん、ただれ(ジクジクした中に白いポツポツがあり痛みを伴います)
- 骨まで達する穴があく
02. 療法
初期のうちでしたら家庭でも手当てすることができますが、進行状態に応じて消毒薬、抗生物質、抗炎症剤など適切な薬剤の選択が必要となります。 また、マッサージなどを行うのにも注意しなければなりませんので、早めに医師、薬剤師に相談し指示を受けましょう。
03. 予防
床ずれは一度できてしまうと、治すのがとてもやっかいなものです。 予防と早期発見がなによりですからお世話する人は、入浴や清拭の時には細かい注意を忘れずに。
- 2時間に一回くらいの割で体の位置を変えてあげましょう。
- 掛布団は軽くし、いつも乾燥したものにしましょう。
- タンパク質、ビタミンC、鉄分を十分に取るようにしましょう。
- 水分は食事以外に1000ccは必要です。
- 寝具はやわらかい、吸湿性のある素材のものを選びましょう。
- 寝床、病人の体を常に清潔に保ちましょう。
尿失禁 (にょうしっきん)
老化からくる体の機能の変調や働きの低下などにもよるわけですが、多くはごく少量の尿漏れですから、きちんと治療すれば7~8割は治ります。
01. 症状
- 真性尿失禁 (しんせいにょうしっきん)
括約筋の欠損とか、括約筋を支配する神経の損傷によって自覚もなく、常に尿の漏れる状態の失禁をいいます。 - 腹圧性尿失禁 (ふくあつせいにょうしっきん)
くしゃみや、運動などでおなかに力が入ると、失禁するタイプ。 - 切迫性尿失禁 (せっぱくせいにょうしっきん)
尿意を感じて急いでトイレに行きますが、我慢できずに漏らすタイプ。 - 溢流性尿失禁 (いつりゅうせいにょうしっきん)
膀胱に尿が溜まり過ぎて、少しづつ漏れるタイプ。 - 機能性尿失禁 (きのうせいにょうしっきん)
膀胱、排尿機能には異常が無く、脳梗塞などで手足が不自由で排尿の作業がうまく出来ず、トイレに行っても失禁するタイプ。
02. 療法・予防
- 体操
01. 仰向けに寝て全身の力を抜き、膝を立て、肩幅の広さに足を開く
02. 肛門の周りの筋肉に力を入れたり、抜いたりを繰り返す
03. 01の姿勢から背筋を使って、お尻を30cmくらい上げる
04. お尻を上げる時に肛門に力を入れ、お尻をおろした時に力を抜く
05. 以上を繰り返す - 尿パット
僅かな量の尿漏れで下着を汚す場合はナプキンや尿パットで手軽に防ぐことができます。 また、水分の取り方や便秘の改善など日常生活の工夫も必要です。 - 医薬品
膀胱がすぐ収縮し排尿するので、収縮を抑える薬などの服用で頻尿や尿失禁は改善します。 気になるときはまずかかりつけの医師や専門医に相談して早めに治療することが大切です。
老後を健やかに過ごすことは誰しもが望むところです。 尿失禁も自らの注意で予防できるものですから、よく相談してよい方法を選ぶことです。
寝たきりの高齢者などにみられます重症の尿失禁には、脱着が便利なオムツスタイルのパンツが良いでしょう。 介護の方も一緒になって、排泄や尿失禁に対応する細かい配慮が必要です。
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